「既卒採用」という言葉をよく見かけるけれど、新卒採用や中途採用と何が違うのか、どの企業がやっているのか——意外と正確に説明されていません。
この記事では、20業界231社の採用要項を実測したデータをもとに、「既卒採用」の実際の仕組み(実は3つの形がある)と、実施している大手企業の実例を解説します。
この記事でわかること
- 「既卒採用」の3つの形と、新卒採用・中途採用との違い
- 既卒採用の実施状況を示す最新の政府統計
- 既卒採用を明文化している大手企業の実例(業界別)
目次
既卒採用とは——実は「専用の採用枠」はほとんどない
用語の整理:「既卒」とは、学校卒業後に正社員として就職していない人のこと(厚労省の調査では卒業後すぐの就職者以外で35歳未満・勤務経験の有無不問)。「既卒採用」とは、その既卒者を対象にした採用活動の総称です。
231社の要項を実測してわかったのは、「既卒採用」という独立した採用枠を持つ会社はごく少数で、実際は次の3つの形で行われていることです。
| 形 | 仕組み | 実例(実測) |
|---|---|---|
| ①新卒採用への統合型(主流) | 新卒採用の応募資格に「既卒可」を含める。処遇・研修は新卒と同じ | シャープ・日産・三菱電機・東京ガス・野村證券など多数 |
| ②別枠型(少数) | 新卒枠とは別に、既卒・第二新卒向けの枠を常設・期間設定 | 三菱商事「総合職(第二新卒採用)」、アクセンチュア第二新卒枠、清水建設セミキャリア、東京メトロ社会人採用 |
| ③中途採用の未経験歓迎型 | 中途採用の中で「未経験可・第二新卒歓迎」として受け入れ | 各社キャリア採用の一部・大手グループ子会社 |
つまり「既卒採用を実施している企業を探す」の実務は、新卒採用ページの応募資格を確認することとほぼ同じです。
既卒採用はどれくらい行われているか——最新統計
| 調査項目 | 結果 |
|---|---|
| 新卒枠で既卒者が応募可能だった事業所 | 71%(情報通信業は82%) |
| 受け付けた事業所のうち採用に至った割合 | 43% |
| 卒業後の経過期間「上限なし」 | 53%(上限ありの場合は9割が3年以内まで) |
出典:厚生労働省「労働経済動向調査(令和7年8月)」。2010年の厚労省指針(卒業後3年以内の既卒者は新卒枠で受け付けるよう要請)から15年経ち、既卒採用は「例外」ではなく「多数派の運用」になっています。
既卒採用を明文化している大手の実例(2026年9月実測)
「本当に大手がやっているのか」に、実測の要項原文(要旨)で答えます。
| 企業 | 要項の記載(実測要旨) |
|---|---|
| 三菱電機 | 「既卒者を積極採用」(年数上限なし)。10月入社の秋季採用制度もあり |
| シャープ | 「就労経験の有無は問わない」=職歴あり既卒も新卒枠OK |
| 日産自動車 | 「既卒3年以内」+「職歴が通算3年未満の方はエントリー可」 |
| 東京ガス | 「職歴の有無は問いません」+卒業後4年まで応募可 |
| 三井住友海上 | 「職歴の有無に関わらず、入社日時点で29歳以下」 |
| 野村證券 | 「既卒の方もご応募が可能です」+第二新卒採用も別枠で常設 |
| 読売新聞社 | 「新卒・既卒、学部・学科は問いません。現在、社会人の方も歓迎します」 |
| ソフトバンク | 「入社時30歳未満の新卒・既卒・就業者」=通年のユニバーサル採用 |
業界別の全量(20業界231社の一覧)は、こちらの記事にまとめています。
大手の何割が既卒採用をしているのか——231社で数えた
「既卒採用をしている企業はある」とはよく言われますが、割合を出している記事がありません。20業界231社の応募資格を1社ずつ読んで数えました。既卒の受け入れが読み取れたのは215社です。
| 既卒の受け入れ | 社数 | 215社に対して |
|---|---|---|
| 受け入れている(職歴があっても可+職歴なしのみ) | 183社 | 85% |
| └ うち 職歴があっても応募できる | 92社 | 43% |
| └ うち 正社員経験なしの人に限る | 91社 | 42% |
| 既卒について記載なし | 32社 | 15% |
大手の85%が、何らかの形で既卒を受け入れていました。「既卒採用は一部の企業だけ」という印象は、要項を読むかぎり事実と違います。
業界別・既卒採用の実施率
| 業界 | 受け入れている | 調査社数 |
|---|---|---|
| 広告・マスコミ | 11社(全社) | 11社 |
| インフラ(鉄道・航空・電力・ガス) | 11社(全社) | 11社 |
| 物流・海運 | 10社(全社) | 10社 |
| IT・通信 | 22社 | 34社 |
| 不動産・建設・住宅 | 10社 | 11社 |
| メーカー/金融(信託・カード・政府系)/重工・機械/小売/旅行・ホテル | 各9社 | 各10〜12社 |
| 電機・精密/商社/金融(銀行・証券・保険)/食品・飲料/化学・消費財 | 各8社 | 各10〜12社 |
| コンサル/製薬・医療機器/外食/ゲーム・エンタメ | 各7社 | 各10社 |
| 人材・教育 | 6社 | 10社 |
| 合計 | 183社 | 231社 |
広告・マスコミ、インフラ、物流・海運の3業界は調べた全社が既卒を受け入れていました。「既卒採用をやっている会社を探す」なら、この3業界から見るのがいちばん確実です。
既卒採用の選考は何が行われるか
①統合型(新卒枠)の選考は、ES→適性検査→複数回面接という新卒と同一のフローです。既卒だけ特別な試験があるわけではなく、加わるのは面接での「卒業後の期間」の質問だけ。答え方の型は面接対策の記事で解説しています。
時期は3パターンあります。新卒と同じ春中心の年次サイクル(多数派)、秋季採用(三菱電機の10月入社など)、通年(ソフトバンク・サイバーエージェント・清水建設セミキャリアなど)。春に乗り遅れても秋・通年の枠が残っているのが、今の既卒採用の実態です。
既卒採用に応募する手順
簡単な流れ
- 志望企業の「新卒採用ページ」の応募資格を確認する(既卒可・職歴条項・年数上限の3点)
- 新卒採用マイページに登録する(中途採用の窓口と間違えない)
- ES・適性検査・面接は新卒向け対策と同じ+「卒業後の期間」の説明だけ追加で準備する
最新情報をLINEで受け取る
キソオテの公式LINEでは、既卒採用を実施する大手の募集開始・締切情報を随時配信しています。
よくある質問
Q. 既卒採用と中途採用の違いは何ですか?
評価の前提が違います。既卒採用(新卒枠への統合型)はポテンシャル評価で、実務経験を求められません。中途採用は原則、職務経験・スキルの評価です。職歴のない既卒が中途枠に応募すると不利な土俵で戦うことになるため、まず新卒枠の既卒可を探すのが定石です。
Q. 既卒と第二新卒の違いは?
一般に、既卒=卒業後に正社員経験がない人、第二新卒=新卒入社後おおむね3年以内に離職した人を指します(法的な定義はありません)。ただし企業の枠は言葉どおりでないことも多く、例えばアクセンチュアの第二新卒採用は「社会人経験4ヶ月〜5年未満」が対象です。名称でなく応募資格の中身で判断してください。
Q. 既卒採用の募集はいつ行われますか?
主流の統合型は新卒採用と同じ年次サイクル(春中心)ですが、実測では9月時点でも金融6社・シャープ・デンソー・JR東日本などが受付中でした。加えて秋季採用(三菱電機)・通年採用(ソフトバンクなど)もあり、1年を通じてどこかの枠は開いています。
Q. 既卒採用で入社した場合、給与は新卒と同じですか?
統合型では原則同じです(中部電力は「処遇は新卒と同じ」と明記)。会社によっては職歴を考慮する場合もあり、パナソニックは「経験・能力を考慮」、NHKは前職経験の給与加算を明文化しています。
まとめ:既卒採用は「新卒採用の中」にある
この記事の要点
- 「既卒採用」の主流は新卒採用への統合型。専用枠を探すより新卒ページの応募資格を見る
- 新卒枠で既卒が応募できる事業所は71%。既卒採用はすでに多数派の運用
- 大手の明文例多数(三菱電機「積極採用」・シャープ「就労経験不問」・読売「社会人歓迎」など)
- 選考フローは新卒と同じ。追加準備は「卒業後の期間」の説明だけ
- 春・秋・通年と入口は分散。時期を逃しても次の枠がある
どの大手がどんな条件で既卒採用をしているかの全量は、20業界231社の実測一覧で確認してください。制度の背景は新卒扱いの解説記事が詳しいです。